創業準備ガイド

創業アイデアを整理するときは、自分がやりたいこと、できること、社会や顧客に求められることを分けて考えます。この3つが重なるところに、創業後も育てやすい事業の種があります。

このページでは、自分の棚卸しを行い、創業アイデアをWILL・CAN・NEEDで整理する方法を確認します。

このページでわかること

  • 自分の棚卸しから創業アイデアを見つける方法
  • 自分史や周囲の声から強みを整理する方法
  • WILL・CAN・NEEDで事業の種を比べる考え方
  • 次の経営理念につなげる言葉の残し方

アイデア整理は自分を知ることから始まる

創業アイデアを考えるとき、最初から商品名や店舗名を決める必要はありません。まず整理したいのは、自分が何に熱中し、どんな経験を積み、どんな場面で人の役に立ってきたかです。

自分の棚卸しをすると、好きなこと、得意なこと、続けてきたこと、人に評価されたことが見えてきます。これらは、創業後の商品づくり、接客、集客、専門性、経営理念の材料になります。

自分では当たり前だと思っている経験が、他の人から見ると強みになっていることがあります。たとえば、後輩に仕事を教えるのが得意だったこと、家族や友人から相談されやすかったこと、趣味を長く続けてきたことも、事業の特徴につながる可能性があります。

自分史から強みと好きなことを見つける

自分の棚卸しでは、社会人になってからの職歴だけでなく、学生時代や子どものころの経験も振り返ります。

特に、次の4つの問いを使うと、自分の強みや好きなことを見つけやすくなります。

問い見つかる材料
時間を忘れるほど熱中したことは何か好きなこと、関心の深い分野ものづくり、スポーツ、料理、研究、発信
人に感謝されてうれしかったことは何か人に提供できる価値教える、直す、相談に乗る、紹介する
大きな達成感を感じたことは何か粘り強さ、実行力、成果の出し方資格取得、大会、営業成果、プロジェクト完了
自分の成長を実感できたことは何か学習力、改善力、伸びる領域技術習得、接客改善、マネジメント経験

ここでは、きれいにまとめようとしなくてかまいません。数を出すことを優先し、思い出したことを短い言葉で書き出します。

自分だけで考えず人に話してみる

自分の強みは、自分では気づきにくいことがあります。

自分では「普通にやっていただけ」と思うことでも、周りから見ると「説明がわかりやすい」「段取りがうまい」「人を安心させる」「細かい変化に気づく」といった強みとして見えていることがあります。

棚卸しをしたら、信頼できる人に自分の経験を話してみます。相手に聞く質問は、難しくしなくてかまいません。

  • 私が自然にできていることは何だと思うか
  • 私に頼みやすいことは何か
  • 私が人より粘れることは何か
  • 私の商品やサービスに向いていそうな分野は何か

返ってきた言葉は、そのまま記録しておきます。自分の言葉だけでなく、他人の言葉も事業アイデアの材料になります。

WILL・CAN・NEEDで事業の種を分ける

自分の棚卸しができたら、出てきたアイデアをWILL・CAN・NEEDに分けます。

WILLは、自分がやりたいことや好きなことです。CANは、経験、スキル、人脈、設備、資格などをもとに自分ができることです。NEEDは、顧客や社会が求めていること、困っていること、まだ満たされていないニーズです。

観点意味書き出すこと
WILLやりたいこと創業の目的、好きなこと、成し遂げたいこと
CANできること経験、スキル、人脈、資格、設備、自分ならではの強み
NEED求められること顧客の悩み、社会の課題、地域の不足、潜在的なニーズ

3つのどれか1つだけに偏ると、事業として続ける難しさが出やすくなります。理想は、WILL・CAN・NEEDの3つが重なるところにあるアイデアを見つけることです。

WILL、CAN、NEEDの3つが重なる場所に事業アイデアが成立することを示した図
やりたいこと、できること、求められることが重なる場所を探します。

3つが重なるアイデアを探す

創業アイデアは、思いついた順に決めるよりも、複数の候補を並べて比較すると判断しやすくなります。

お客様の困りごとと自分の強みを掛け合わせて創業アイデアを作る図
顧客の困りごとに自分の強みを掛け合わせると、価値を生み出す事業の種が見えてきます。

たとえば、次のように考えます。

アイデアWILLCANNEED気づき
例: 子ども向けプログラミング教室子どもの学びを支えたいIT経験、教える経験地域に学習機会が少ない強みと需要が重なる
例: 手作り焼き菓子の販売お菓子づくりが好き製菓経験、SNS発信ギフト需要、地域イベント許認可や販路の確認が必要
例: 高齢者向けスマホ相談身近な人を助けたい説明力、IT知識操作に困る人が多い継続課金や訪問体制を検討

この段階では、正解を1つに決めきらなくても大丈夫です。大切なのは、「なぜその事業を自分がやるのか」「誰が求めているのか」を言葉にできる状態へ近づけることです。

創業計画書につながる言葉を残す

アイデア整理で出てきた内容は、創業計画書の複数の項目につながります。

WILL・CAN・NEEDは、創業計画書の項目名そのものではありません。自分の考えを整理し、創業の動機、経営者の経験、商品・サービス、セールスポイントへ転記しやすくするための整理方法として使います。

アイデア整理の内容創業計画書につながる項目
なぜ創業したいのか創業の動機
これまでの経験や実績経営者の略歴等
自分ならではの強みセールスポイント、取扱商品・サービス
顧客が求めていること取扱商品・サービス、取引先・取引関係等
事業として取り組む理由事業内容、自由記述欄等

あとで創業計画書に転記しやすいように、気に入った言葉、相手から言われた言葉、顧客の困りごとは短いフレーズで残しておきます。

よくあるつまずき

アイデア整理でよくあるつまずきは、3つあります。

1つ目は、好きなことだけで決めてしまうことです。好きなことは続ける力になりますが、顧客が求めているか、代金を払う理由があるかを確認する必要があります。

2つ目は、できることだけで決めてしまうことです。経験やスキルは強みですが、自分が本当に取り組みたいと思えなければ、創業後の困難を乗り越えにくくなります。

3つ目は、流行や需要だけを追ってしまうことです。求められている分野でも、自分の強みや価値観と合わなければ、他社との差別化が難しくなります。

WILL・CAN・NEEDを分けて考えることで、勢いだけでも、分析だけでもない創業アイデアに近づけます。

次は経営理念に言葉を育てる

創業アイデアが見えてきたら、次はその事業を通じて何を大切にしたいのかを考えます。

WILL・CAN・NEEDで見つけた重なりは、経営理念の材料になります。自分がやりたいこと、自分だからできること、顧客や社会に求められることをつなげると、事業の軸が言葉になります。

次のページでは、ミッション、ビジョン、バリューを整理し、事業の判断基準を作ります。

次のページへ進む:経営理念

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