創業準備ガイド

資金計画で大切なのは、足りない金額をなんとなく借りることではありません。見積書、開業準備、仕入れ、入金条件、黒字化までの期間をもとに、必要な金額の根拠を作ることです。

このページでは、設備資金と運転資金の分け方、調達方法の考え方、創業計画書に転記できる資金計画表の作り方を整理します。

このページでわかること

  • 設備資金と運転資金を分けて必要額を見積もる方法
  • 自己資金・借入・補助金など調達方法の整理
  • 必要資金と調達方法の合計を一致させる考え方
  • 創業計画書に転記する前の見積根拠の確認

資金計画は2つの表を一致させる

資金計画では、左側で「何にいくら必要か」を整理し、右側で「その資金をどこから調達するか」を整理します。

最終的には、必要な資金の合計と、調達方法の合計が同じ金額になります。

このページでは、日本政策金融公庫、民間金融機関、自治体の制度融資、補助金、クラウドファンディング、出資などを、創業時の資金調達の選択肢としてフラットに扱います。どれか1つを前提にするのではなく、必要資金、入金時期、返済条件、手続き負担を比べて考えます。

見ること内容
必要な資金設備資金、運転資金など、創業に必要な金額
調達の方法自己資金、親族等からの借入、金融機関借入、補助金など
確認すること必要な資金の合計と調達する金額の合計が一致しているか

資金計画が曖昧なままだと、開業後に資金不足になったり、借入額が多すぎて返済が重くなったりします。まずは、必要な資金を漏れなく出すことから始めます。

設備資金と運転資金を分けて考える

創業に必要な資金は、大きく「設備資金」と「運転資金」に分けます。

設備資金は、店舗、工場、機械、車両、什器、備品、看板、レジなど、開業前後に準備する設備にかかる資金です。運転資金は、商品仕入、家賃、人件費、広告宣伝費、水道光熱費など、事業を回すために必要な資金です。

区分内容
設備資金開業や事業運営に必要な設備を準備する資金店舗内装、機械、車両、什器、看板、レジ、備品
運転資金売上入金まで事業を回すための資金商品仕入、人件費、家賃、広告宣伝費、水道光熱費、外注費

設備資金と運転資金を分けると、何にお金が必要なのか、どの資金が不足しやすいのかが見えやすくなります。

設備資金は見積もりと代替案で確認する

設備資金は、見積もりの根拠が重要です。

店舗内装、機械、車両、設備、什器、備品などは、できるだけ複数の見積もりを取り、金額の妥当性を確認します。創業前は理想の設備をそろえたくなりますが、初期投資が大きくなりすぎると、開業後の資金繰りが苦しくなることがあります。

チェック項目確認すること
複数見積もり取得予定の設備について、複数社から見積もりを取ったか
初期投資の抑制中古品、リース、レンタルで代替できないか
不足の確認什器、備品、看板、レジ、消耗品などの漏れがないか
優先順位開業時に必須のものと、後から買えるものを分けたか
事業との整合性ビジネスモデルに必要な設備か

設備資金は、単に安くすればよいわけではありません。顧客に提供する価値や安全性、品質に必要なものは確保しながら、過剰な初期投資を避けます。

運転資金は黒字化までの期間を見込む

運転資金は、開業してから売上が安定するまで事業を続けるための資金です。

開業直後は、売上がすぐに安定するとは限りません。商品仕入、家賃、人件費、広告宣伝費などの支払いは先に発生し、売上の入金は後になることもあります。

チェック項目確認すること
黒字化までの期間売上が安定するまで何か月分の資金が必要か
入金と支払いのずれ売上入金より先に仕入・外注・家賃の支払いがないか
固定費家賃、人件費、通信費、保険料など毎月出る費用はいくらか
変動費仕入、材料費、発送費、外注費など売上に応じて増える費用はいくらか
予備費想定外の支出に備える余裕を持っているか

日本政策金融公庫の「創業の手引」では、参考情報として、日本公庫「2025年版新規開業白書」による黒字化にかかった期間の平均が6.4か月と紹介されています。業種や地域によって異なるため、自分の事業では何か月分の運転資金が必要かを個別に見積もります。

自己資金は着実に蓄積する

自己資金は、創業者自身が準備している資金です。

自己資金が多いほど、借入に頼る割合を抑えやすくなり、開業後の返済負担も軽くなります。また、創業に向けて計画的に準備してきたことを示す材料にもなります。

日本政策金融公庫の「創業の手引」では、参考情報として、日本公庫「2025年度新規開業実態調査」における調達総額に占める自己資金の割合の平均が22.9%と紹介されています。この数字は目安であり、必要な自己資金は事業内容、必要資金、返済計画によって変わります。

確認すること内容
自己資金の金額現在いくら準備できているか
蓄積の経緯どのように貯めてきたか
使える時期開業時に本当に使える資金か
生活費との区分事業資金と生活費を混ぜていないか
借入とのバランス借入額が過大になっていないか

自己資金は、創業後の安心にもつながります。すべてを設備に使い切るのではなく、運転資金や予備費とのバランスも見ます。

親族・知人等からの借入は条件を明確にする

親、兄弟、知人、友人などから資金を借りる場合は、創業計画を説明し、賛同を得られるかが重要です。

身近な相手からの借入は、長期の返済を認めてもらえるなど、条件を相談しやすい面があります。一方で、条件を曖昧にすると、後で人間関係のトラブルになることがあります。

確認すること内容
借入金額いくら借りるのか
返済開始時期いつから返済するのか
返済期間何か月、何年で返済するのか
利息の有無利息をつけるか、つけないか
書面化借用書などで条件を確認するか
関係への影響返済が遅れた場合の対応をどうするか

親しい相手ほど、事前に条件を言葉にしておくことが大切です。

金融機関等からの借入を整理する

金融機関等からの借入は、事業を成長させるうえで重要な選択肢です。

借入を検討する場合は、必要な金額だけでなく、返済できる見通しもセットで考えます。「収支計画」で、利益から返済元金を差し引いた後に手元資金が残るかを確認します。

確認すること内容
借入先日本政策金融公庫、民間金融機関、制度融資など
借入目的設備資金なのか、運転資金なのか
借入金額必要資金に対して過不足がないか
返済期間毎月の返済額が事業に合うか
返済原資利益から返済できる見通しがあるか
相談準備創業計画書、見積書、自己資金、収支計画が整理されているか

都道府県や市区町村が実施する制度融資がある場合もあります。制度内容は地域や時期で変わるため、創業予定地の自治体や金融機関で最新情報を確認します。

補助金、クラウドファンディング、出資の特徴を知る

自己資金や借入以外にも、補助金、クラウドファンディング、出資などの調達方法があります。

ただし、どれも万能ではありません。入金時期、審査、条件、返済の有無、手続きの負担を確認します。

方法特徴注意すること
補助金原則として返済不要の資金後払い、補助率、対象経費、申請期限などの制約がある
クラウドファンディング共感や応援を集めて資金を募るリターン設計、広報、実行負担、手数料を考える
出資返済不要の資金提供を受ける場合がある株式提供、経営への関与、調達までの時間を考える

補助金は、採択されてもすぐに入金されない場合があります。補助金を前提に資金計画を作る場合は、支払い時期と入金時期のずれに注意します。

必要資金と調達方法の合計を一致させる

資金計画の最後は、必要な資金の合計と調達方法の合計を一致させることです。

たとえば、設備資金と運転資金の合計が800万円なら、自己資金、親族等からの借入、公的融資、民間金融機関からの借入、制度融資などを合計して800万円にします。

必要な資金金額調達の方法金額
設備資金自己資金
運転資金親族・知人等からの借入
公的金融機関等からの借入
民間金融機関・制度融資等からの借入
合計合計

合計が一致していない場合は、必要資金の見積もりを見直すか、調達方法を見直します。足りないまま開業すると資金不足になり、多すぎる借入は返済負担を増やします。実際に使う創業計画書や相談先によって、調達方法の欄名や分け方が異なることがあります。

創業計画書に転記する前に見積根拠を確認する

資金計画で整理した内容は、創業計画書の「必要な資金と調達方法」に使います。

転記する前に、金額の根拠を確認します。

確認すること内容
設備資金の根拠見積書、カタログ、契約予定、数量
運転資金の根拠月々の支出、仕入条件、入金条件、黒字化までの期間
自己資金の根拠預金残高、蓄積の経緯、使える時期
借入の根拠必要金額、返済期間、返済見通し
補助金等の根拠申請時期、対象経費、入金時期、採択の不確実性

創業計画書では、数字が整っていることだけでなく、なぜその金額が必要なのかを説明できることが大切です。

よくあるつまずき

資金計画でよくあるつまずきは、設備資金ばかりに目が向き、運転資金が不足することです。

内装や設備は目に見えるため金額を出しやすい一方で、開業後の家賃、人件費、仕入れ、広告宣伝費、入金までのつなぎ資金は見落としやすくなります。売上が立つまでの期間を見込まないと、黒字化する前に資金が苦しくなります。

もう1つのつまずきは、補助金やクラウドファンディングを確実な資金として見込んでしまうことです。申請や募集には不確実性があるため、入金時期と条件を確認し、必要に応じて別の資金手当ても考えます。

次は収支計画で返済後の手元資金を見る

資金計画で「いくら必要か」と「どう調達するか」が見えてきたら、次はその資金を使って事業を続けられるかを確認します。

次の「収支計画」では、売上、原価、経費、利益を整理し、借入金の返済や生活費を差し引いた後に、手元にお金が残るかを見ます。

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